祖父にもらった古ぼけた時計が止まってしまった。
幼い私にはどうしたらよいかわからず、工具を使い力、任せに蓋を取り外し、絶望した。
複雑なネジや歯車が、私の心を巻き込んでいくようだった。
蓋を外さなければ、私はまだ希望を見る事ができたのに。
時計を動かす動力はぜんまいばねや錘(おもり)である。ぜんまいばねはゆっくりとほどけながら動力主軸を回し、おもりはゆっくりと下がりながら動力主軸に撒きついた鎖を引いて主軸を回す。ぜんまいばねがほどけきったら巻き直し、おもりが下がりきったら巻き上げる。ぜんまいばねがほどけきるまで数日から数十日のものが一般的だが、万年時計のように長期間動き続けるものも作られた。
動力主軸の回転は数枚の歯車を経て短針・長針を回転させるが、最後に噛み合わされた特別な歯車(雁木車 - がんぎぐるま)にアンクルのツメが掛けられて止められるため、動力段から長針・短針・雁木車に至るまでの全ての歯車の動きは止められる。
アンクルは一定のリズムで揺れる振り子やテンプにはじかれるように左右に往復して、雁木車を止めていたアンクルのツメは外れたり掛かったりを繰り返す。アンクルには雁木車を止めるためのツメが二つ付いていて、片側に振れたときには一方のツメは雁木車から外れて、もう一方のツメが雁木車に掛かるようになっている。この仕組みによって、アンクルが左右に振れるたびに雁木車はちょうど一歯分だけ回転し、雁木車の回転に呼応して全ての歯車も一定のリズムで回転する。「チクタク」と聞こえる時計の音は、アンクルのツメが一定のリズムで雁木車に掛かる際の音である。
振り子やテンプは、そのままでは摩擦などによってやがて止まってしまうため、動力源から僅かに力を伝えて揺れ続けさせる必要がある。この僅かな力は雁木車からアンクルを通して振り子やテンプに伝えられる。雁木車の歯やアンクルのツメの形状には工夫がしてあり、アンクルのツメが外れて雁木車が回転する際に僅かにツメを押し返すようになっていて、ついでアンクルが振り子やテンプを揺らし続ける仕組みである。